2020
01.19

vol.11『アベノミクスによろしく』と日本のミニ中国化を進めたアベノミクス

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『そして安倍晋三は終わった』を書くにあたり、引用・参考にした文献・資料を紹介するコーナーのvol.11です。

vol.10までは以下からごらんください。

vol.1/vol.2/vol.3/vol.4/vol.5/vol.6/vol.7/vol.8/vol.9/vol.10

 

いまの日本が「経済」と呼んでいるのは、市場を通じて財やサービスの取引が自由に行われる経済のことではなく、国民から吸い上げた税金を「お上」が官制企業に流し込む「官制経済」のことである(『日本が自滅する日「官制経済体制」が国民のお金を食い尽くす!』)。

公務員の数は、発表されているのは国家公務員が約64万人、地方公務員が約275万人の合わせて約340万人である。

しかし肩書きは公務員でなくとも、結果的に収入が税金から支払われている、実質的に公務員と変わらない人間の数は、石井紘基の調べでは3665万人いる。

それは日本の労働人口の6割にのぼり、その6割に支払われる給料が、残りの4割の純粋な民間人が納めた税金で賄われている。

日本政府が「経済」と呼んでいる「官制経済システム」は、経済に対する政治・行政権力の支配であり、ある意味日本は一種の社会主義体制国家なのである。

社会主義体制においては市場の競争原理は抹殺され、価値の創出は減殺され、資本の拡大再生産機能が失われる。

一定の経済水準に達した社会における社旗主義は極めて危険で、それはソ連邦の崩壊や東欧社会主義諸国の末期において、すでに実証されている。

 

アベノミクスとはなんだったか。

2012年12月の第2次安倍内閣から始まったアベノミクスは、「3本の矢」を掲げて政策の最大目標を経済回復と位置づけ、デフレ脱却を達成するとしたものだった。

しかしその実態は、物価が上がり、賃金が下がり、結果、戦後最悪の消費停滞をもたらしただけだった。

2016年の参議院選前には「3年連続2%の賃上げ達成」とコマーシャルしていたが、それが達成されたのは全労働者の5%に過ぎなかった。

2000年を100とした場合の先進7か国の2015年度の名目賃金を比較すると、カナダ、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツの指数はおおよそ130〜160と伸びているのに、日本だけが90以下に下がった。

 

ひたすら国民を貧乏にしたアベノミクスは、その上、「第3の矢」で「高度プロフェッショナル制度」と「裁量労働制」という、聞こえはいいが実質的には「労働基準法の規制を外して残業代をゼロにする」制度を導入した。

高度プロフェッショナル制度では、残業時間の上限の規制をかけない代わりに、条件さえ満たせば360日連続勤務や24時間勤務が合法になり、裁量労働制では、実際には何時間働いても予め決められていた労働時間しか労働したとみなされない。

要は、長時間労働を助長し、労働者を過労死させるための政策といって過言ではない制度を、国の政策として実行するのがアベノミクスだった。

実質的な社会主義体制の日本で、さらに市場の競争原理を抹殺し、さらに価値の創出を減殺し、さらに資本の拡大再生産機能が失わせるために行われたのがアベノミクスだったのだ。

 

また、長時間労働の弊害は以下のようなものが考えられる。

 

・労働力が使い潰され、労働力不足がますます深刻化する
・過労で精神障害になる人が増えて、社会保障が増える
・長時間労働が女性にとって正社員への参入障壁となり、女性の賃金が増えない
・生活時間が奪われるので、消費に回るお金が減る
・労働者の賃金が低下する
・家族で一緒に過ごす時間が減り、家庭内不和となって離婚が増える
・長時間労働で疲弊した状態で働くので生産効率が悪くなる

長時間労働や残業代の不払いはすでにブラック企業で横行しているが、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制は、そのブラック企業の現状をさらに悪化させるものである。

残業代の不払いは、経営者が労働者から労働力を搾取し、賃金を盗んでいるのと同じである。

先進7か国で日本だけが名目賃金指数が下がったという現実は、経営者の労働者からの労働力と賃金の搾取も遠因となっており、ブラック企業問題は単なる労働問題ではなく経済問題であるといえるのである。

 

労働者は、盗みに等しい行いを続ける経営者の言いなりになって泣き寝入りするのでなく、小さくてものその声を上げていかなければならない。

しかし、労働紛争を司法の判断に委ねようとしても、裁判長や弁護士会会長、弁護士の懲戒処分を判断する風紀委員会会長など、判断する立場を使用者側の弁護士が固め、公正な判断が下されないのがいまの日本の司法である。

ブラック企業問題は単なる労働問題ではなく経済問題であるが、制度に現れない使用者側弁護士の奢り、怠慢、老害が、労働者を消費するブラック企業を野放しにしているのである。

労働者を軽視して搾取し「盗む側と盗まれる側しかいなかった」のはミニ中国といえる朝鮮王朝の特徴で、いまの日本は税金のみならず、賃金や労働力においても「盗む側と盗まれる側」に2分されている。

 

日本のミニ中国化をいっそう進めたのがアベノミクスなのである。

 

■引用・参考文献・資料
明石順平『アベノミクスによろしく』集英社インターナショナル、2017年

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