08.31
『結界』と謎の死を遂げた大物政治家、カルト宗教による日本転覆計画
ある政治家の「死」と動き出す巨大な陰謀
盗まれたのは「国家の最高機密」だった
「敗戦国・日本」は再び敗れ去るのか
「永遠の独立」か「終わりなき従属」か
この作品はフィクションであるはずなのに、ある種“暴露”めいている。
物語は妙に現実味を帯びていて、名前や役職、企業名を架空のものとしているだけで、ほんとうは、作者が知り得たことをそのまま書いているのではと思えるほどだった。
とりわけ、日本政府が40年秘密裏に開発してきた、“存在しない”核兵器については。
人物や慣れない名称や肩書が多く登場するも、シーンの区切りや小休止がドラマのCMのようなタイミングで訪れるので、上下巻とも300ページ以上ある大作も、混乱してことなく軽快に読み進められた。
自身の整理もかねて以下に主な登場人物をメモすると、以下の通り。
岡本哲之介:財務大臣。自由憲政党に大派閥「桃円党」所属。ホテル・グランドカッスル大阪の部屋で「自殺」
内木:岡本大臣の公設第一秘書。第一発見者
高島昇:総理大臣
麻野紀夫:幹事長
麻野孫四郎:麻野紀夫の父
立浪義彦:経済産業大臣兼国家公安委員長
秋山繁三郎:元弁護士。民主連合党党首
中田力:元総理大臣。与党最大党派「桃園会」名付け親
山賀:官房長官
鳥谷龍彦:岡本大臣後援会長
山口和也:国立研究開発法人・日本核燃料研究機構安全管理課長、『第三種特別指定物質』緊急輸送訓練責任者
若木主任:山口の後輩。運転手
佐々木大介:東京経済新聞記者
沼沢善明:「週刊日本芸能」記者
新田:東亜中央新聞記者
新井千佳子:佐々木大介の元恋人
堀田慶子:ホテル・グランドカッスル大阪中華料理店アルバイト
ヘキサ神仙の会:新興宗教団体。1995年東京の地下鉄で大規模毒ガステロ事件を起こし十数名の死者と数千名の負傷者を出す
光の社:巨大宗教団体。全世界に支部をもつ
盗まれた「国家の最高機密」が、作中にでてくるそのままのものでないにしろ、それに準ずるものをいまの日本政府がもっていても驚かない。
日本という国で元総理大臣がああいう殺された方をしたのに、真犯人を追究せず、カルト宗教批判に世論が誘導されている現実を考えれば、日本政府が国民のみえないところでなにをしていても不思議ではない。
むしろ、情報が一般人に知らせたときには必要な準備はすべてすでに済んでいて、秘密主義の政府の計画は次の段階に移っている。
カルト団体をどう扱うか、も、それに含まれているはずだとおもわずにはいられないし、次の段階の露見は、だから統一教会が一通り批判されたあとに始まるのだと思う。
世間を賑わせて派手に批判される側もする側も、でもほとんど内部抗争みたいなもので、こうして“悪いやつ”は消えていくのだと思う。
ある種“暴露”めいた『結界』は、政治や宗教、軍事や国際情勢の知識がある人ほど、思い当たるフシが多くてたのしめるのではないかと思います。
日本がこういう状況だからこそ、日本を愛するかたには一読をおすすめいたします。
※一部に乱丁があったため現在は下記サイトのみでの販売で、Amazonなどでは9月中旬までに再販の予定だそうです。
■参考図書
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