05.23

『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』と日本をウイグル化するスーパーシティ法
中国共産党について調べていくと、オンデマンド臓器移植のための臓器収奪のことにたどり着く。
このにわかには信じがたい非人道的なしわざは、しかし中国の歴史や中国固有の宗教である儒教思想、その儒教が食人さえ肯定していたことを知るにつれ、彼らならやりかねないと思うようになる。
カナダの人権弁護士デービッド・マタスは、2006年、法輪功学習者を対象とした臓器売買の疑惑を調査し、書籍『中国臓器狩り』では、2000~2005年に中国で41,500件の臓器移植が行われ、臓器の提供元は、法輪功の「良心の受刑者」であることに議論の余地はないと結論づけている。
ノーベル平和賞候補者であり「中国での臓器移植濫用停止国際ネットワーク」(ETAC)の共同創設者であるイーサン・ガットマンは、著書『THE SLAUGHTER(殺処分)』で、臓器収奪の犠牲者は、法輪功学習者のほかにはチベット、ウイグル、全能神のコミュニティーだとし、2000~2008年のあいだに行われた臓器収奪の数は、65,000人の法輪功、2,000~4,000人のウイグル人、チベット人、キリスト教徒と推定している。
無神教を掲げる中国共産党は、共産主義の最終目標である宗教の抹殺に乗りだしている。
キリスト教会は建物をブルドーザーで破壊し、聖書に孔子や習近平の「おことば」を混ぜて中国共産党の教えを強要している。
気功は、中国では運動や武道、瞑想や呼吸エネルギーの「気」を合わせた中国伝来の健康法であって、宗教ではないとされている。
健康増進などの利用価値があることから、中国共産党も当初は法輪功を信じるふりをしていたが、一般的にいって、気功は宗教的な性質を備えている。
実際のところ法輪功は、「人間は神聖を失い、地上に囚われた神である」と教えるグノーシス主義(反宇宙的二元論の立場に立ち、人間の本質と至高神とが本来は同一であることを認識することにより、救済、すなわち神との合一が得られると説く)に基づく一宗教であるという。
信者が1億人にまで達し、法輪功がコントロール不可能なところまで来たと判断した中国共産党は、1999年、法輪功を邪教とし、法輪功やその他の邪教の迫害を監督する610弁公室を組織した。
法輪功信者やキリスト教徒に加え、中国共産党は、ウイグル族からも臓器収奪を行っている。
ウイグル族とは、新彊ウイグル自治区で圧倒的多数を占めている民族である。
歴史的に見ると、20世紀前半に中国領内の中央アジアのオアシス地域に広範囲にわたって居住するチュルク系イスラム教徒が、古代のウイグルの名称に因んでウイグルという呼称のもと、ひとつの民族とみなされたものである。
ウイグル族は古くから、チュルク系言語に基づく特有の文化を育んできており、宗教は、全民族的にスンニ派のイスラム教を信仰している。
ウイグル族の社会では、中華人民共和国の成立直後まで、コーランの教えに基礎を置くイスラム法が機能していたと考えられ、伝統的にウイグル族の生活のなかで中心的な位置を占めてきたのはイスラム教の礼拝堂モスクである。
ウイグル族の社会には、マバツラと呼ばれる居住区が地縁的な共同体として生活基盤をなしており、マバツラの中心には必ず地区のモスクがあり、毎日5回、決められた時間に礼拝が行われている。
主要集落には、イスラム教徒の安息日である金曜日ごとに周辺地域の人々が集団で礼拝を実施する大規模な寺院も設置されている。
しかし、中国共産党体制下の政策によってイスラム法は完全に効力を失い、宗教施設に属していた寄進地が没収されるなど、「再教育」という名の共産主義化・中国人化のための教化・洗脳が強行されている。
『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』には、国連人種差別撤廃委員会や欧米メディアが人権侵害の問題として注目し始めた新疆ウイグル自治区の「再教育施設」から、奇跡の生還を果たしたカザフスタン人オムル・ベカリによる生々しい告発が書かれている。
オムルは1976年トルファン生まれ。民族的にはカザフとウイグルの混血で、成人後はカザフスタンで仕事をするようになった。やがてカザフスタンで国籍を取得し、カザフスタン国民として旅行ビジネスに従事。カザフスタン南東部の都市、アルマトイの旅行会社の副社長を務めるまでになった。2017年3月23日、仕事でウルムチに出張した。仕事を終え、帰国前の3月25日に両親の住む故郷、トルファンの実家に立ち寄った。その翌日の3月26日のことである。突然、武装警察がやってきた。問答無用で頭に袋を被せられ、手足を縛られて連行されたのだった。
どこに連れてこられたのかは分からない。「最初に血液と臓器適合の検査を受けた。自分の臓器が中国人の移植用に使われるのかと思い恐怖を感じた」とオムルは振り返る。その後、4日にわたり、激しい尋問を受けた。「お前はテロリストを手伝っただろう?」「新彊独立運動に加担したな」「テロリストの主張を擁護したな」……答えないと、警棒で脚や腕を傷跡が残るほど殴られた。だが、拷問に屈して「はい」と答えてしまえばテロリストとして処刑されると思い、必死で耐えた。「私はカザフスタン国民だ。大使館に連絡を取ってくれ」「弁護士を呼んでくれ」と要求しても、無視された。他のウイグル人が拷問を受ける姿も目の当たりにした。両手を吊るされて、汚水タンクに首まで浸けられて尋問されていた。
寒い夜中、水を掛けられて生きたまま凍えさせる拷問も見た。同じ部屋に収容されていた2人が拷問により衰弱死した。1人は血尿を出しても医者を呼んでもらえず、放置された。
尋問のあとは、洗脳だった。いわゆる「再教育施設」に収容され、獣のように鎖でつながれた状態で3カ月を過ごした。小さな採光窓があるだけの12㎡ほどの狭い部屋に、約50人が詰め込まれた。弁護士、教師といった知識人もいれば、15歳の少年も80歳の老人もいた。カザフ人やウズベク人、キルギス人もいたが、ほとんどがウイグル人。食事もトイレも就寝も“再教育”も、その狭く不衛生な部屋で行われた。午前3時半に叩き起こされ、深夜零時過ぎまで再教育という名の洗脳が行われる。早朝から1時間半にわたって革命歌を歌わされ、食事前には「党に感謝、国家に感謝、習近平主席に感謝」と大声でいわされた。
さらに、被収容者同士の批判や自己批判を強要される批判大会。「ウイグル人に生まれてすみません。ムスリムで不孝です」と反省させられ、「私の人生があるのは党のおかげ」「何から何まで党に与えられました」と繰り返す。
「『私はカザフ人でもウイグル人でもありません、党の下僕です』。そう何度も唱えさせられるのです。声が小さかったり、決められたスローガンを暗唱できなかったり、革命家を間違えると真っ暗な独房に24時間入れられたり、鉄の拷問椅子に24時間鎖でつながれるなどの罰を受けました」と当時の恐怖を訴える。
さらに、得体の知れない薬物を飲むように強要された。オムルは実験薬だと思い、のむふりだけをして捨てた。飲んだ者は、ひどい下痢をしたり昏倒したりした。食事に豚肉を混ぜられることもあった。食べないと拷問を受けた。そうした生活が8カ月続いた。115kgあったオムルの体重は60kgにまで減っていた。
「同じ部屋に収容されていた人のなかから毎週4、5人が呼び出されて、二度と戻ってきませんでした。代わりに新しい人たちが入ってきます。出て行った人たちはどうなったのか」
常時警官に見張られ、また被収容者同士も相互監視を強いられた。寝るときは、同じ部屋の3分の1の15人ほどが起きて、残りの被収容者の寝ている様子を監視させられた。拷問に慣れ、痛みも感じなくなり、このまま死ぬのだと、絶望していたという。(p.49-52)
これを読んでくださっている方は、ブラック企業で働いたことはあるか。
わたしはある。
ブラック企業は、どんな命令をでも聞く奴隷をつくりだすために、いかにも業務や業務に必要なことだと装った洗脳を行う。
まず不当に低い賃金で雇い、長時間労働を強いる。
携帯電話を取り上げたり、日常的な習慣を否定するなどして外側の人間との関係を断ち、業務上必要なことだけに取り組ませる。
社員の前で社訓を大声で読み上げさせたり、意味のないマラソンやスポーツ大会で休日に体力を消耗させ、街で知らない人と名刺交換をさせたりして団体行動を強制し、絶対的に命令に従うことを叩きこんでいく。
全体と違う行動をとったりそのやり方に疑問を抱いたりする1人を残りの全員で糾弾して孤立させ、社員同士で監視させて互いにつねに犯人捜しをさせる。
長時間労働に加えて食事や睡眠時間を制限する。
まともな判断力を奪われると人は、残業代の請求など当然の権利の主張にも頭がまわらなくなり、命令に疑問を抱いて反対したり会社を辞めたりするよりも、ただ命令されたことに従って多数勢にまわり、団体行動を乱す1人を糾弾していた方が楽だと思うようになる。
上記すべてを自身で一か所で経験したわけではないが、聞く話と共通するのは、彼らは私生活や心という、ごくプライベートな部分に土足で立ち入るだけでなく、その私生活や心を一方的に断罪し、非常な罪悪感を植えつけるということだ。
そうして自己を批判させ、自身がひどく過ちを犯していると思わせ、過去からの価値観を捨てさせてとにかくいうことを聞かせようとする。
彼らは手八丁口八丁なので、指摘はたしかにもっともなように思える。
しかし、実際のところ彼らがしていることは暴力による個人の自由の否定であり、尊厳の毀損であり、規模の大小の差こそあれ、中国共産党のウイグル人に対するしわざとおなじである。
そうして自己批判を受け容れた人は、自身の人生や選択に責任をもつことができなくなり、結果、「私の人生があるのは党のおかげ」「何から何まで党に与えられました」というのと似たようなことを口にするようになる。
そこまでくれば、やがて「党のために」と命をかけて罪さえ犯すようになるのは時間の問題だ。
尊厳の棄損を続けられている新彊ウイグル自治区では、中国共産党は、ウイグル人はテロリスト・犯罪予備軍という前提で、顔認証AIカメラを利用したハイテクネットワークによる監視統治強化を行っている。
中国は、全国で監視カメラはすでに27億台が設置されており、一人当たり2台の監視カメラが中国人民を見張っている。
しかも顔認証カメラは2018年末の2億台から2020年までにさらに4.5億台に拡大する計画で、画面に映る人間の身元を数秒で割り出す高性能のカメラが中国人口2~3人当たり1台配備されている計算になる。
その監視カメラの最大集中地域が新彊地域であり、ウルムチ市では、交通違反者の顔を大画面に晒すという形で社会制裁が行われている。
この、自身に都合の悪い人を犯罪予備軍とし、個人情報を晒して社会的制裁とするという感覚こそが、いかにも下劣な中国共産党的感覚であるが、ウイグル人がここまで集中的に管理され、身柄を拘束される理由のひとつとして考えられるのが、中国共産党が闇で数十億円規模のビジネスにしているという臓器狩りである。
先述の再教育施設から生還したオムル・ベカリは、気功で健康増進をはかり「良心の囚人」となっている法輪功信者同様、中国共産党から拘束されてすぐに血液検査や身体検査を受けたと話していた。
ムスリムは、その戒律により豚肉とアルコールが禁止されており、「清い臓器」のため、同じイスラム教徒の臓器の移植を受ける患者のあいだでは非常に高い需要があるという。
新疆は一大臓器提供者市場でブローカーも多く、移植医療病院では、中東風の容姿をした富裕層の外国人の入院の多さが報告されているという。
そして国が個人の私生活や心に土足で立ち入ることを許す、臓器狩りの準備ともいえる監視は対岸の火事ではない。
いわゆる「スーパーシティ」法案(国家戦略特別区域法改定法)が、コロナ禍騒ぎの裏で密やかに通ろうとしている。
これが通れば特区は日本の新彊ウイグル自治区になり、日本人はウイグル人の二の舞を舞う。
日本でも一切の肉食やアルコールを禁じ、断食や菜食を推奨する人がいるが、病的なまでに健康に執着させるのは、よく考えればわかるが本末転倒なことである。
個人がたまにそういう日をつくって自己管理とする程度ならともかく、それを推奨する人が中国共産党的性質を備え、かつ、その人を賞賛する人が中国共産党に「再教育」された人のような振る舞いをしているのなら、彼らが熱心になにかを禁じ、なにかを推奨することの先には、とても人間のすることとは思えないおぞましい目的があるのだろう。
■参考図書
福島香織『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』PHP研究所、2019年
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