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くじ

くじ

  家の外がやけにうるさいと思ったら、三連休だった。 子どもたちが集団で自転車を乗り回している。 もしかしたらもう夏休みなのかもしれない。 それで昼間、マラソンをする人を見かけたのだ。いつも見かけるのは夕方なのに。   道路は公のものなので、どんなふうに通ろうと勝手なのだけれど、毎日しずかな家の外で、ふいに子どものすっとんきょうな声がすると、どきりとする。 夏休みで、たのしくて […]
泳げるということ

泳げるということ

わたしは泳げる。 だからなんだという人もいるだろうけれど、わたしはずっと泳げなかった。 だから泳げることにあこがれた。 そして泳げるようになった。 だからとてもうれしい。 クロールと平泳ぎで泳げる。 平泳ぎの方が息継ぎが楽にできるので、クロールよりも長い時間泳いでいられる。 地に足がついていなくても転ばず、つかめない水を蹴ると前に進む、ということは、泳げるようになる前には、頭ではわかっていても実際 […]
書くことの効用

書くことの効用

    「逃げないということ」で書いたが、わたしはある特定のことがらから逃げてきた。 ある特定のことがら、は、言いかえると、したいこと、なのだけれど、でもそれは、ただ欲に従うということでなく、そんなふうに生きたいというものだ。 でも、なんだかんだと理由をつけて、そうなることの準備を怠ってきた。 「理由」は、そのときどきの自分にとってはもっともなことに思えたものだった。 けれど、 […]
逃げないということ

逃げないということ

  真夜中、だれもいない小さな交差点を右折すると、突然、けたたましい音が背後で鳴った。 びくりとすると同時に、視界の端がやけにきらびやかであることに気づいた。バックミラーを見ると、暗闇でランプを光らせて近づいてくる車があった。 救急車だった。 ぎらぎらと猛スピードで迫りくる姿は、まるで威嚇しているようだと思い、そう思いながら、この道の進む方向に病院はないので、あの救急車はいまからだれかを […]
苦い野菜

苦い野菜

ゴーヤを食べた。 豚肉とにんじん、豆腐と卵と炒めて食べた。 縦に半分に割られ、さらに横に薄く切られ、かつ油で炒められてもあまり変わらない、ぎょっとする佇まいのひとつひとつを箸でつまんで口に入れ、苦いとわかっているのだけれど噛んで苦いことを確かめて飲み込んだ。 夏だ。 そう思うと、苦いとわかったそばからすぐまた確かめたくなって、ぱくぱく食べた。 ああ苦い、やっぱり苦い、と、まるで、長い外国旅行から帰 […]